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コラム

山口証券印刷の歴史から紐解く乗車券の変遷 ~前編~
2025年10月30日


山口証券印刷の歴史を語る上で不可欠なものが「乗車券」です。

最盛期には売上の大半を乗車券が占め、1940年から51年までは「山口乗車券印刷所」という屋号で会社運営を行っていたほどです。


創業当時の会社案内「山口ニュース」

日本における乗車券の発祥は明治時代となりますが、弊社が携わったのは大正末期の関東圏のバスの軟券乗車券が始まり。その後当時弊社の付近に本社があった京成電鉄様から名刺を受注したことがきっかけで、大手鉄道会社様の乗車券の仕事をいただくようになりました。東京大空襲で社屋が焼失してしまった際には、京成電鉄様の上野公園駅構内の一角を使わせていただきながら乗車券の生産をしていたこともありました。

このような苦難を乗り越え、地道に実績を積み重ねた結果、各鉄道会社様からの信頼を得ることができ、関東近郊を中心に、また現在では全国各地の多くの鉄道会社様とのお取引を継続しています。


様々な乗車券のカタチ


当初鉄道乗車券は、「硬券(こうけん)」と言われる、厚み0.6mm程度の若干クリーム色がかった板紙の乗車券が主流でしたが、1925年代には軟券乗車券が普及しはじめました。さらにはその後、多能式自動券売機(券売機自体に印刷機構が備わっており、発売のたびにロール紙(巻紙)に運賃等を印刷する方式)が登場し、1971年からは券売機にセットするためのロール紙も弊社で製造するようになりました。


ロール紙

ロール紙は、ゴム印版方式、ジアゾ感光紙方式、キレート方式、サーマル感熱方式と印刷方式が進化していき、また自動改札機の登場とともに磁気化されるなど、時代のニーズに応じて技術的に進化していきました。

さらにその後、1980年代には券売機で乗車券を購入できるプリペイドカード(「ロマンスカード(小田急電鉄)」「レオカード(西武鉄道)」など)や、1990年代には改札機に直接投入できるストアードフェアシステムカード(「ルトランカード(京浜急行電鉄)」「パスネットカード(首都圏22社局共通)」など)が登場し、このようなカードタイプの製品についても生産設備を導入して対応しました。


弊社で製造したパスネット

このように、弊社は中小企業でありながらも大手券売機・改札機メーカー様と研究開発を重ね、技術の進化とともに時代のニーズに合った製品をご提供してまいりました。


(後編へつづく)